No17.引きこもり次男に起きた体の異変-花火大会で気づいた”心のSOS”

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8月も下旬、次男の変化に気づく

8月も下旬。朝日がのぼる時間が少しずつ遅くなり、夜明け前の空気にほんのり秋の気配が混じりはじめました。
例年、夏の間は次男の生活リズムが比較的安定しているのですが、今年は違いました。近くで開かれた花火大会を境に、何かが狂い始めていたように思います。


花火大会の夜に起きたこと

8月の第一土曜日。毎年恒例の花火大会がありました。
夕暮れになると、浴衣姿の家族連れや学生たちが団扇を片手に歩道を埋め尽くし、会場へと向かっていきます。
夏の夜空を彩る大輪の花火は、地域の人にとって楽しみな行事。私にとっても、季節の風物詩でした。

けれど、その光と音の下で、次男は苦しんでいたのです。


「お腹が痛くて動けない」次男からの電話

花火の開始時刻を次男が聞いてきたとき、私は少し驚きました。
人混みを嫌って出かけることなどほとんどない次男が、自ら「時間は何時?」と尋ねてきたからです。答える間もなく、彼は黙ったまま自転車で出かけてしまいました。

夜遅くになっても帰ってこず、心配しながらも寝ようかと思ったとき、主人の携帯が鳴りました。
「お腹が痛くて動けないから迎えに来てほしい」――次男からの電話でした。

会場近くのお店に車を走らせると、花火の余韻が残る中、人混みから少し離れたトイレ脇に、ぐったりと腰を下ろす次男の姿がありました。暗がりの中で肩を丸めて座り込む様子は、胸が締めつけられるほど痛々しかったです。


思いつめた表情で語られたこと

帰宅後、次男は思いつめた表情で話し始めました。

「前からずっとトイレに行きたい感覚があった。でも、自分なりにコントロールできていた。
それが最近はできなくなって、頭がおかしくなりそうだと。」

静かに語る声には、焦りと絶望が混じっていました。
私は言葉を失いました。こんなに苦しんでいたのに、私は何一つ気づけなかったのです。


親として気づかされたこと

後で調べると、似た症状に「過敏性腸症候群」という病名があると知りました。
腸に大きな異常はなくても腹痛や便通異常が続き、ストレスで悪化することがある――。

医学的な説明に納得しつつも、私の胸に突き刺さったのは「息子がどれほどの時間、不安に耐えてきたか」という現実でした。

引きこもって6年。私は「ただ時間だけが過ぎていく」と思っていました。
けれど本当は、静かな日々の裏で、彼の心は乱れ、体は悲鳴をあげていたのです。
それに私は気づかず、同じ屋根の下で見過ごしてきた――母としての無力さを痛感しました。


これからの私の姿勢

無口な次男とは、今も会話らしい会話はほとんどありません。
それでも、今回の出来事は私に大きな学びを残しました。

  • 子どもの心と体の小さな変化を見逃さず、もっと注意深く寄り添うこと。
  • そしてどんなに距離があっても「あなたを一人にはしない」という姿勢を持ち続けること。

花火大会が残した忘れられない夜

一人で見上げた花火を、次男はどんな気持ちで眺めていたのでしょうか。
夜空に広がる光の渦。歓声に包まれる人々。
そのにぎわいの中で、彼だけが腹痛で動けなくなり、孤独と不安に押しつぶされていた。

今年の花火大会は、私にとっても忘れられない夜になりました。
夜空に咲いては消えていった大きな花火。
その中に私は次男からの小さなSOSを見た気がします。


まとめ

花火は一瞬で消えるはかないもの。けれど、その夜に感じた息子の痛みと孤独は消えることはありません。
次男の心のSOSを見逃さず、これからも寄り添い続けたい――そう強く思った夏の夜でした。

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