
引きこもり生活も、もう6年になります。
あの頃は一日一日をどう過ごすかで精一杯で、気がつけば月日が過ぎていました。
けれど今、振り返ってみると、記憶の輪郭は少しずつ薄れてきています。
そんな中で私が次男の歩みをブログに書き始めたことで、曖昧になっていた出来事の一つ一つが再び線でつながってきました。
その中でも、大きな節目となったのが税務職員採用試験です。
通信高校4年目の頃から受け始め、今回が3度目の挑戦でした。
正直、私はこの試験を「頼みの綱」と思っていました。
合格すれば少しでも社会に近づけるかもしれない。
そんな期待が、私の中にありました。
しかし10月9日の合格発表の日、次男の受験番号はありませんでした。
これまでの2回は一次試験を通過していたのに、今回はその壁も越えられませんでした。
夏ごろから続いていた腹痛や便意の不調で、受験すら危ぶまれていた状況。
無事に受けられたこと自体が奇跡のようでしたが、当日は痛みと集中力の低下で、思うように問題に向き合えなかったようです。
合格発表の日は、たまたま心療内科の通院日でもありました。
診察室で次男は淡々と「落ちました」と伝えました。
主治医は、受験すると聞いたときから「今はやめておいた方がいい」と思っていたようです。
万が一合格しても、今の体調では仕事を続けるのは難しい――
その言葉が現実の重さを物語っていました。
医師の判断は冷静で正しいのかもしれませんが、母としては心がざわつきました。
努力してきた姿を知っているだけに、どうしても受け入れがたかったのです。
落ちる覚悟はしていたつもりでした。
けれど、実際に現実を突きつけられると、気持ちは空っぽになりました。
心のどこかで「もしかして」という期待を手放せずにいたのでしょう。
過去の経験から、そんなに甘くないとわかっていたのに、希望の方へすがってしまっていました。
試験が終わった今、私はこの出来事をどう受け止めればいいのか、何度も自問しました。
この先も、きっと同じように期待しては崩れることがあるでしょう。
そのたびに落ち込んでいたら、私の心がもたない。
そう思うようになりました。
そこで私は、次男が引きこもる前の明るく前向きだった姿を、いったん心の中で封印することにしました。
理想の姿を追いかけすぎると、現実とのギャップに苦しくなるからです。
その代わりに、今ある生活の中から小さな幸せを見つけるようにしました。
次男が少し外に出た日。
トイレに行く回数が減った日。
私に話しかけてくれた瞬間。
そんなささいな変化を見つけると、心が少しやわらぎます。
忙しさに追われていた頃には気づけなかった、穏やかな時間です。
引きこもりの6年間、苦しいことばかりでした。
誰に相談したらいいのかもわからず、答えのない問いを自分に繰り返してきました。
状況は良くなるどころか、むしろ悪化しているようにも感じます。
けれど、それでも私たちは生きていくしかない。
今は心療内科で体調を整えてもらいながら、次男が少しずつ社会に戻れるようになることを目標にしています。
そして、私自身にも変化のときが来たように思います。
次男の回復をただ待つのではなく、母である私が動く番。
その一歩として、10月24日に浜松精神保健福祉センターで開かれる「引きこもり家族の講習会」に参加する予定です。
6年ぶりに外の支援機関へ足を運ぶことになります。
再び外の世界とつながることで、何かが変わるかもしれない――
そんな思いを胸に、静かにその日を待っています。

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