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太陽の光が届くまで、どれほどの時間がかかるのか——
夏の本番を迎えました。
次男が使っている部屋は、朝から強い日差しが入り、セミの鳴き声も加わって、ゆっくり寝ていられるような環境ではありません。
クーラーもつけていないので、昼間ひとりでどうやって過ごしているのか、ふと気になることもあります。
けれど私は、あえて干渉しないようにしています。
実は、夏になると、次男の生活が「ほんの少しだけ」昼寄りになります。
日の出が早くなって、光が彼の部屋にも差し込んでくる。
それが何かしらの刺激になっているのか、いつもより少しだけ早く目が覚める日が出てくるのです。
彼が不登校になったのは、中学3年のとき。
最初は「朝、起きられない」ことがきっかけでした。
それが少しずつ昼夜逆転へと変わっていき、やがて本格的な引きこもりに。
「夜にちゃんと眠れるようになれば、学校にも行けるのでは」と思い、病院で軽い睡眠薬を処方してもらいました。
けれど、それがまったく合わず、かえって眠れなくなり、怖くなってやめました。
それからも、夜型の生活は続いています。
特に季節の変わり目には、生活リズムがいっそう崩れがちです。
「夜型くらい、大したことではない」と軽く考えていた私も、今ではその根深さに打ちのめされています。
睡眠の乱れが与える影響は、思っていたよりもずっと大きかった
眠れない日々が続くと、気持ちが沈み、やる気も起きず、考えもまとまりにくくなります。
そうなると、学校や仕事、友人との関係すら難しくなってしまう。
ただ「朝起きられない」だけなのに、生活のすべてが回らなくなってしまうのです。
さらに、悪循環もあります。
昼間に動かないから、夜に眠れない。
眠れないから、昼夜逆転する。
昼に起きられないから、自己否定が強まり、また動けなくなる。
この繰り返しのなかで、次男はもう6年近く過ごしています。
朝の光は、もしかしたら、その連鎖を断ち切る「糸口」になるかもしれない
最近の私はというと、熱帯夜のせいで眠りが浅く、朝も早く目が覚めるようになりました。
けれど不思議なもので、眠くても、カーテンを開けて朝の空を見ると、今日は何かいいことがありそうな気がして、体が自然と動き出すのです。
厚生労働省の資料にも、
「起床後に日光を浴びて体内時計をリセットすることが、生活リズムを整える基本」
と書かれています。
人の体内時計は、実は約24.2時間で、放っておくと少しずつズレていくのだそうです。
そのズレを調整してくれるのが、朝の光。
特に、2,500ルクス以上の強い光(つまり外の太陽の光)が必要で、室内の照明(300〜500ルクス程度)では足りません。
カーテン越しの光も、正直ほとんど効果がないのだとか。
さらに、朝にしっかりと光を浴びておくと、14〜16時間後には「そろそろ眠る時間」と体が認識し、メラトニンというホルモンが自然に分泌されるようになります。
つまり、朝に太陽の光を浴びなければ、夜に眠気が来ない。
このリズムが崩れてしまうと、夜型の生活がさらに固定されてしまうのです。
たとえ曇っていても、外は1万ルクスを超える明るさがあります。
本当は、「浴びない理由」はほとんどないのです。
自然に任せていても、きっかけはそう簡単には起きない
そう思えば思うほど、私は迷います。
たしかに、彼の生活はあまり変わっていないように見える。
でも、本当にゼロなのか?と自分に問いかけると、そうとも言い切れません。
昼ごろに起きてくる日が、たまにあります。
日中の高温や、セミの鳴き声など、外の何かに彼がふと反応してくれたのかもしれません。
それがたまたまであっても、私はどこかで小さな期待を抱いてしまいます。
けれど、それは彼自身の「意思」によるものではない。
たぶん、それが一番のもどかしさです。
カーテンを開けるという、ただそれだけのことが、いまの彼にはとても高いハードルになっています。
朝日がどれだけ部屋に差し込んでも、自分で起きて、それに気づいて、動くところまでいかなければ、何も変わらないのです。
私たちが住むこの地域は、日照時間が全国でも長い場所です。
私自身、これまで何度も太陽の光に助けられてきました。
だからこそ思ってしまうのです。
「いつか、あの光が彼の背中をそっと押してくれたら」と。
けれど——
どれだけまぶしい光が降り注いでも、自分で行動しなければ、生活は変わりません。
自然の力にすべてを任せたい。
そう思えば思うほど、私は願いとあきらめの間を行き来するようになります。
焦らなくていい。
変わらないように見える日々のなかにも、
ほんの小さな「揺れ」や「兆し」は、きっと生まれているはず。
それが、彼自身の「選んだ変化」になる日を、私は静かに待ち続けます。
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